Re:「コピペ転載推奨」について

はじめに

これまでの流れ

  1. チェーンメール、チェーン日記全否定の啓蒙活動に思う徳保隆夫さん 2006-12-04)
  2. 善意であれ事実であれチェーンメールはダメゼッタイという話(rikuo 2009-12-17)*1
  3. コピペ転載(チェーンメール、チェーン日記)批判を問い直す徳保隆夫さん 2009-12-21)
  4. Re:コピペ転載(チェーンメール、チェーン日記)批判を問い直す(rikuo 2009-12-22)
  5. 「コピペ転載推奨」について徳保隆夫さん 2009-12-22)



というわけで、
「コピペ転載推奨」について
こちらのエントリーに返信。

「発信年月日と最初に情報を発信した人物・団体がわかるコピペ転載なら問題ない」ということであれば、rikuoさんと私に大きな意見の相違はないかもしれません。

http://deztec.jp/design/09/12/22_life.html

この点については概ね同意です。
Twitterに話を戻しますが、私は非公式RTは嫌いで反対の立場で、その一方で公式RTは歓迎していますし賛成しています。

Twitterで言えば「発信年月日と最初に情報を発信した人物・団体がわかるコピペ転載」は公式RTに相当するでしょう。ただ公式RTでも過不足なく十分である……とまでは考えていません。Twitterは一度投稿した内容を修正・追記ができないばかりか、140字しか書けないメディアです。それに加え、ブログで言うところの「前の日記、次の日記」といったナビゲーションもなく大変不便です。
そうした点を考えると、非公式RTよりは公式RTの方がまだまし、……だけれども報知に使うならそもそもTwitterではなく、ブログのような他のメディアが向いている、と考えています。


しかしこれをそのままチェーンメールの方に当てはめられるか、というとそうではなく公式RTについては内容が改変されていないことが保証されていますが、チェーンメールは伝播の過程で内容の改変が行われていないとは限らないわけです。……ならばリンクで十分、と思うのですが……。



また

「コピペ転載推奨」を叩いたって、バカが見えにくくなるだけで、意味ないんですよ。そりゃ情報の再発信を邪魔すれば、ネット上では少しヘンな情報の伝播速度が落ちるように見えるかもしれないけれど、ネット上での情報発信なんて口コミとは比較にならない。1日にTwitterに投稿した話題しか世間話しない人がいるとすれば、相当に無口な方ですよね。ブログの読者数、Twitterのフォロー数で掛け算したって、人気上位1%程度の人だけだと思いますよ、ネット上の情報発信力が口コミ力を上回っているのは。

http://deztec.jp/design/09/12/22_life.html

口コミとTwitterの投稿とを比較していますが、これは喩えとしては適切ではないでしょう。
Twitterの投稿を口頭での1つの発言と捉えるならば、確かに会話の方がずっと情報量が多いですが、「世間話=口コミ」とした場合1日に話す相手は十数人程度、多くても数十人ぐらいでしょう。そしてそれぞれ会話の相手がさらに伝播したとしても1日ではそれほど多くは広がりません。
しかし、Twitterでは1つの投稿が数百人、場合によっては千人以上に読まれることもあります。
さらに

ブログの読者数、Twitterのフォロー数で掛け算したって、人気上位1%程度の人だけだと思いますよ、ネット上の情報発信力が口コミ力を上回っているのは。

http://deztec.jp/design/09/12/22_life.html

と分析されていますが、先日Twitterで実際に起きた献血RTの発端となったユーザーのフォロワー数は具体的にどれくらいか調べてみました。
こちらで
screenshot
Twitter上で輸血をお願いするデマ情報が拡散 - Hagex-day.info
広がりが分析されていますが発端となったユーザーは概ね2人で、対象となる投稿はこちら。
http://twitter.com/ibishin/status/6698729655
http://twitter.com/yupi63/status/6698825950
(いずれも現在は削除されています)
前者(@ibishinさん)のフォロワー数は現在38人、しかしこの方のアカウントを献血RTが話題になった直後に見たのですが、その当時はさらにフォロワー数が少なく十数人だったと記憶しています*2。件の騒動以後、注目された結果フォロワー数が増えたわけですね。
もう一人の方(@yupi63さん)は現在、149人。この方の騒動以前のフォロワー数は把握していませんが、やはり多少増加したのではないかと推測しています。



というわけで、今回の献血RTの広がるきっかけとなったユーザーの1人のフォロワー数は十数人、また一方も150人程度。これは一般のTwitter利用者と比較してどの程度の値なのか、調べてみると
POLAR BEAR BLOG: 問題:平均的 Twitter ユーザーのフォロワー数は?
2009年6月の記事で少々古いですが、こちらの調査では平均的なユーザーでは126人となっておりこの値と比べてもそれほど多いフォロワー数でもありませんね。
そしてその伝播の様子はこちらでも解説されています
screenshot
chaintweet (2009/12/16)
こうした「人気上位1%程度の人」でなくとも、コピペ転載である非公式RTであれば口コミ力を大きく上回り、短い時間で多くのユーザーに分岐して広がり、さらに分岐して大きく広がりました。こうした状況を考えると、「ネット上の情報発信力」が「口コミ」に劣っているどころか、はるかに高いこともあるわけです*3


ですから

コピペ転載には、いくつかの利点があります。

  • 情報中継者の「解釈」が入り込むことなく、情報が劣化せずに伝わる。
  • 提示された参照情報を決して辿らない人にも、その場で情報を伝達できる。
  • 情報発信者のメディア力が小さくとも、情報を広く伝播できる。
http://deztec.jp/design/09/12/22_life.html

徳保さん自身が提示されている通り「情報発信者のメディア力が小さくとも、情報を広く伝播できる。」ので、

「コピペ転載推奨」を叩いたって、バカが見えにくくなるだけで、意味ないんですよ。そりゃ情報の再発信を邪魔すれば、ネット上では少しヘンな情報の伝播速度が落ちるように見えるかもしれないけれど、ネット上での情報発信なんて口コミとは比較にならない。

http://deztec.jp/design/09/12/22_life.html

この点は強く反論しておきます。
確かに口コミは強い情報発信の力を持ちます、身振り手振りも含めて目の前でプレゼンを受けるようなものですから、説得力は強いでしょう。ただそれはそれとして「コピペ転載」も強い情報発信の力を持つんです。そしてどちらの方が強い・弱い、優れている・劣っている……か簡単に測れるものではなく、伝播の仕組み、特徴・種類が違うんです。羽生さんとイチロー選手どっちが強い?なんて考えるもので、ある面では強いですし、違う面では弱いでしょう。単純な比較には向きません。
「コピペ転載」は「提示された参照情報を決して辿らない人にも、その場で情報を伝達できる。」わけですし「情報発信者のメディア力が小さくとも、情報を広く伝播できる。」からこそ、「人気上位1%程度の人」でなくとも短い時間で膨大な分岐をして多くの人に広がりました。これは口コミとは異なる特徴です。
ですから「意味ない」どころか、私は意味があると考えています。


「コピペ転載するなら、元情報の発信年月日と最初の発信者を明確にするべき」という提案にとどめるのが妥当な線ではないでしょうか。
と、ここで冒頭の注釈に戻るわけなんだけれども、元情報の発信年月日と最初の発信者が明確になっている「コピペ転載推奨」の情報は「チェーン***」の定義から除外して話をしています、とrikuoさんにいわれたら、それでも私は「絶対にダメ」はいいすぎだと思うものの、とくに大きな対立はないわけです。

私も冒頭で書きましたが、Twitterで言えば非公式RTは反対にはですが公式RTには賛成です。また公式RTは「チェーンメール」とは異なる、とも私は考えています。なのでその点について対立がない件は理解しました。
また、はてなブックマークコメントでも書きましたが社内での「コピペ転載」の活用事例は、チェーンメールとは実態が異なると思うんですよね。

><

*1:ただ、このエントリーを書いたとき、徳保さんの2006-12-04のエントリーは別に念頭になかったのですが……

*2:他にも確認された例:@ululunさんの投稿 http://twitter.com/ululun/status/6702008951

*3:この事例一つだけでは、「口コミ力」と「ネット上での情報発信力」との高低は判断できませんが