「降臨賞応募作品」本日のお仕事インタビュー第63回
――それでは、よろしくお願いします
「あーはいはい、え?なに、もうテープ回ってるの?」
「まァ、もう今はテープなんて使わねぇか、でなんだっけ」
――このお仕事について簡単に説明などを
「そうだったね、うーんと、そもそも『降臨現象』っていうのが起きたわけだな」
「十数年前から、突然女の子が空から降ってくるようになって、全国のあちこちで彼女らの激突死した遺体が転がってたもんさ、あれは酷かったねぇ、アンタは見たことあるかい?」
――いえ
「衝撃がすごいから、ほとんど身体の形を保ってないんだが、臭いがね……今でも憶えてるよ。それに女の子もそうだが、巻き込まれた方も辛いもんさ」
――しかしなぜ空から、しかも少女ばかり?
「それは未だ不明らしい」
「学者連中はいろいろ調べているが、ま、原因はともかくそうした現象がある、っていうだけで誰かが対処せにゃならん」
「で、俺らみたいのがいるっていうわけだな、降ってくる女の子を無事に助けるために」
――どのようにしてそれを行うのですか
「女の子たちは、上空3,000メートルぐらいに突然現れる、そう突然ね」
「しかも裸でだ、あー、いやいや服は着てるんだが、パラシュートとかは身につけてないっていう意味でね」
「だから彼女たちに、衝撃を吸収する『バブル・ボール』を撃ち込む……うーんと言ってみれば小型バリア発生装置みたいなもんだね。それを当てるっていうのが、単純に言やあ俺の仕事だな」
「が、それには問題が2つある」
「1つは自由落下をし続ける女の子に、命中させるのは至難の技っていうこと、地上からの狙撃じゃまず不可能」
――だから、ご自身も一緒になって落ちるわけですか
「そっ」
「相手と同じようにこっちも自由落下すれば、問題ないわけ。ま、落下中に撃つのはそれなりに訓練いるけどね」
――しかしどこに出現するのかは分からないのでは?
「それが最も大きい問題点だなぁ」
「目星をつけて上空で待機してても、全く現れない事だってざらだよ。この商売はまぁ待つことが仕事だね」
――どうやって出現の場所や時期を特定するのですか
「勘って言っちゃあ、かっこいいんだろうが」
「要はね、彼女たちはヒロインなんだ、それぞれの物語のね」
――はぁ
「地上でね、男を観察するわけ、あーこの青年には物語を紡ぐ力があるな、っていうのを見極めて、それで上空で待つっていうことだね」
「空から降ってくる女の子は、その青年の運命の相手というわけだから」
――失礼ですが、意外にロマンチストなんですね
「へへへ、まーねー」
「というのもね、実はうちの家内も、空から降ってきた女の子なのよ。俺の場合はたまたま登山中に降臨したから、たいした怪我なかったけど、まぁそのときにお互い一目ぼれってヤツ?をしてねー」
「で、そうした出会いが待っているっていうのを、少しでも手伝いたいというのが、この『キューピッド』の仕事をやっている理由かなぁ」
――なるほど、本日は素敵なお話ありがとうございました